荘子 ~生きるのが空しいとき~
「ただ虫 よく虫たり
ただ虫 よく天たり」(荘子)
(唯虫 能く虫たり
唯虫 能く天たり)
「やがて死ぬ
けしきは見えず蝉の声」(芭蕉)
解説
『私心』のない虫は、
死を恐れることがないので、
死ぬ直前まで、
天からうけた
その命を生ききる。
*****
実生活で、それほど、
辛い状態だった訳でもないのに、
あるときなぜか、
だんだん気力が落ちていき、
しまいには「ただ空しい」
という無力感に陥ったことがある。
自分で自分を情けなく思ったが、
実際どうにもならなかった。
ベランダに、
じっとしている「カメムシ」を見た。
地面に平行するように平たくて、
ほとんど動くこともなく、
生きてはいるが、すでに、
つぶされたような様子の虫だった。
この虫は死ぬ時に、
誰かに悲しがられることも、
埋葬されることもないんだなと思った。
それは気楽な一生に思えた。
*****
「唯虫 能く虫たり、
唯虫 能く天たり」
あのカメムシも、きっと、
死ぬまでちゃんと
生きるんだな。
と思ったら、
えらいやつかもしれない、
と思えるようになった。
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